制作事例

【PR】よいストーリー・よい著述は、よい資料整理から

弊社(有限会社スタジオモナド)では、

●コンシューマーゲーム、ソーシャルゲームを中心としたゲームの世界観・キャラクター・シナリオ制作
●アニメーションの脚本制作
●漫画の企画・原作制作
●書籍の著作

などを主に行なっています。
それぞれの業務を進める際、手がける作品・プロジェクト自体に直接的に関わる資料(企画書や設定資料、仕様書など)以外にも、作品の扱う舞台、時代などの背景や特徴を調査・考察するための資料を収集し、制作作業の土台作りを行います。

そういった資料は多岐・多様・大量となるため、紙の書籍資料は電子化(PDF化)します。
学術論文などは、各機関でPDF化され公開されているものを収集します。

大量に収集したPDF類を整理・分類するために、以前はエクスプローラー内で内容に応じフォルダ分けして整理していましたが、よりクリエイティブに直結する整理・活用方法を模索し、近年はPDF編集アプリやサービスの利用を試行しています。

様々なものを試していますが、中でも今回アドビさんとのタイアップでご紹介する「Adobe Acrobat オンラインツール」は編集・整理・メモ・他形式への変換等々、必要な機能を一通り備えており、有力な選択肢になりつつあります。

(1)資料の収集 (リサーチ)

制作作業はまず、取り組む企画・作品の特徴、性質、目的、本質を理解することから始まります。その上で、大まかな舞台設定・時代設定や歴史的背景の骨組みを描きながら、リサーチを開始。

資料の種類、数量は多岐にわたります。

フィクション、ノンフィクション、学術研究書、美術書、技術書など。手当たり次第にリストアップします。市販されているものはできるだけ購入。現在は学術研究論文の多くがPDF化され公開されているので、これも関連するものを可能な限り探し出し、ダウンロードします。

リサーチを進めると、市場に出回っていない文献や紙媒体にしか発表されていない論文の存在に行き当たりますが、そういった資料は国立国会図書館で調達します(国会図書館は国内でリリースされた出版物を全て網羅・保管しています)。国会図書館の複写サービスを利用し、必要な資料を揃えていきます。

実際のリサーチ作業がどのようなものになるかというと、例えば、ナポレオンの戦術についてリサーチする必要が生じたとします。ナポレオンは著名な人物であり、その業績、戦歴や戦術についてはある程度知られています。数多くの類書、文献が出版されてもいますが、「伝説的な偉人」に関する伝承の常として、一般に流通している情報の多くがビジネスマン向けに簡略化されすぎていたり、正確でないこともまた広く知られるところです。

 

個人的にもナポレオンについては以前より強い関心があります。
それゆえ「一般に流通している伝説・情報だけでは説明がつかない」事例が多くあると感じています。しっかりと調査する必要があるという認識をもって作業を開始します。

まず手持ちの資料の中からナポレオンに関係するものを抽出します。
次に夥しい数の日本語文献をふるいにかけ、信頼できる著作を選び出し、確保します。

並行して、これはどんなリサーチの場合も必要なことですが、調査対象に関して最低限押さえておかねばならない「基本文献」を特定し、入手します。

ナポレオンの場合は、デイビッド・チャンドラーの『ナポレオン戦争』全五巻がそれに当たります。ですが、同書は市場から姿を消して久しく、古書市場でもほとんど出物がありません。ネットオークションにおける凄まじく高騰した価格を出すことは予算的に難しいので、国会図書館に通い全巻を精読し、必要な箇所を選びだして複写します。また、ナポレオン研究は当然外国語圏の方が充実しています。入手・利用しやすい英語文献や論文を電子版・PDFで収集します。

これらの資料は非常に膨大なものとなります。

(2)資料の分類・整理(一次整理)

収集した膨大な資料を、

1)書籍・紙資料
2)電子書籍・PDF論文

に分類し、一括し利用しやすい形にすべくそれぞれを処理していきます。
まず、1)の紙媒体のものを電子化(PDF化)していきます。

・自炊による全頁/冊のPDF化
・国会図書館文献の複写資料のPDF化
・書籍・紙資料の一部をPDF化

PDF論文を加え、これらPDF化した資料を主題・レファレンス用途毎に分類・整理します。ナポレオン戦術・戦史に関しては、例えば「フランス革命」「ナポレオン以前の軍事思想」「ナポレオン以前のフランスの軍制改革」、ナポレオンが従事した戦役毎の分類など。

歴史的・社会的に大きな枠組み・テーマから、より小さな枠組み・テーマに段階的に分類できるよう項目を設定します。各分類間で重複する(複数の分類項目内に振り分けられる)資料もありますが、PDFなのでそれも容易になります(コピペすれば良いので)。



Acrobat オンラインツールでは、スキャンデータのPDF変換PDFの不要なページの削除、PDFページの並べ替え、PDFページの追加挿入、Microsoft ワード/エクセルファイルのPDF変換など、一つのサービス上で一貫して行えます。また、ログインすれば作業ファイルをクラウドにアップロードでき、オンライン版のMicrosoft Wordと直接連携できるため、英語文献のPDFから翻訳したデータをオンライン版Wordで編集し、そのままAcrobat オンラインツールでPDF化できます。

あらゆる分類・整理が、オンライン上でひとつながりで行えるのが非常に便利だと感じます。


(3)分類・整理したPDF資料を精査。

続いて、分類したPDF資料群を精査していきます。

「ナポレオンの戦術」という主題に沿って、分類項目内の各PDFから特に有用な情報を含むページを特定し、Acrobat オンラインツールのPDFの抽出・PDFの分割・複数のPDFをまとめる機能を用いて、元ファイルから分割、抽出します。(2)のプロセスで、分類項目の方を予め「大きな枠組み」→「小さな枠組み」となるよう設定してあるので、各分類項目内から抜き出した戦術に関連する内容は同じような段階をなすようになっており、大所高所の視点・当事者目線・技術的な細目といったそれぞれ異なるレベルから見たナポレオンの戦術、という形にまとまっていきます。


(4)編集した資料を整理・分類(二次整理)。

ここまでのプロセスで、大きい視点から小さい視点まで、同一のテーマ(この場合はナポレオンの戦術)を巡る知見を様々なレベルで多層的に抽出できました。それらを改めて精査し、同じ層の中で、異なる層の間での関連性を見つけ出し整理していきます。

ここでいう関連性は、「歴史的な関連性(ファクトとしての関連性)」と「取り組んでいる作品との関連性(エンターティンメント的に活用可能な関連性)」の二つあります。分類したそれぞれのPDFをそれらの面から再度内容を検討、メモやアイディアを書き込んでいき、これら二種の関連性に基づく新たな分類を行います。

一つ目の関連性を明確化する作業を通じて、ナポレオンが実際に指導部や戦場で行ったこと、実際の戦果とその短期的影響、中長期的影響、ナポレオンの戦術を実行可能とした社会的・歴史的・思想的背景、様々な物理的前提条件が立体的に理解可能になります。こういった事実に基づく因果関係、複数の出来事の関係性についての適切な理解を基礎にできれば、作品の説得力が向上します。

二つ目の作業は、作品制作に直接つながるいわゆる「ネタ出し」となります。

エンターティンメント作品の場合、必ずしも全てが事実ベースである必要はありませんが、複数の事実の関係性をしっかりと抑えることが「そうであるならば、こういう可能性もあったのではないか」というアイディアをうむ基盤となり、また「わかっていること」を知ることで「何がわかっていないのか」が明確になるため、「史実の隙間」を特定することができ、そこを足場にアイディアを膨らませていくことができるようになります。

ナポレオンに関していえば、離婚した後も最初の妻のジョゼフィーヌとの関係が彼の栄枯盛衰の過程を通じて続きます。この関係については資料から確認できる事実の合間に興味深い隙間が横たわっており、単なる男女の非喜劇・確執を越え、ナポレオンの外交戦略や作戦指導に影響を与えたのではないかと想像を膨らませる余地が多々あります。

リドリー・スコットの『ナポレオン』(2023年公開予定)では、この「事実」と「隙間」にフォーカスしてナポレオンの人生と戦史にアプローチしており、注目されています。三谷幸喜が脚本を執筆した大河ドラマ『鎌倉殿の十三人』では、やはり資料の「隙間」に見え隠れする、主人公北条義時の想いびとの存在を膨らませてドラマ全体に影響を与える「最初の妻」を想像し好評を博しました。


以上のように、これらの作業は非常に重要なものです。

この作業を通じて、ファクトに基づく厚みとリアリティを備えたアイディアを生み出すことが可能になり、作品・著述のクオリティを上げることができます。一旦整理・分類した資料PDF群をさらに細かく分離し、様々に組み合わせて多様な事実確認とイマジネーションの苗床を作るプロセスであり、資料PDFの編集結合分割変換をクラウド上でシームレスに、多種多彩に行えるAcrobat オンラインツールは進行を効果的に助けてくれます。

(5)作品制作プロセス上で、随時活用。

ここまでのリサーチ・分類・整理のプロセスで、以下のPDF群が出来上がりました。

● 様々なレベルから歴史的事実・考証面を多角的にチェックできるPDF資料群
● リサーチ作業中浮かんだアイディアがメモされ、創作ノートの役目も果たすPDF資料群

これらを随時参照しながら、制作作業を進めていきます。

(6)全体として

Adobe Acrobat オンラインツールの一番の魅力は、一つのサービス内でリサーチ・資料化に必要な作業ほぼ全てを完結できることと感じます。複数のPDF関連アプリやサービスをまたぐ必要がなくなるので、作業の効率化、時短にもつながるのも助かるところです。弊社ではAdobe Creative Cloudを業務に活用しているので、同じアドビの公式ツールであるところもなじみ深く安心感があります。

出力ファイルのクオリティ面も、編集・抽出・結合にしろ、Wordからの/への変換にしろ、総じて高く、数多くのファイルを精査しながら処理していく上で作業がシームレスに続けられるのもにノッキングが発生しづらいのもいいです。

全ての機能を制限なく使うには有料のAcrobat ProAcrobat Proを利用する必要がありますが、こういったクリエイティブのリサーチ作業では大きなサイズのPDFデータも数多く扱うので、アップグレードのリターンは十分にあるように感じています。

まずは無料で使えるAdobe Acrobat オンラインツールから試してみてはいかがでしょうか。